10年ぶりの大改訂。充実の最新版、満を持して登場
第六版に収録されている項目を分野ごとに抽出し、各界の専門家が全面的に校閲。文学・歴史から物理学・医学、美術・音楽に武芸・茶道、スポーツ・サブカルチャーまで、学問の研究の進展や最新の動向を反映し、また旧版の不備を補うなどして、より正確で簡潔な解説に改めました。一方、現代生活や各分野の理解に必須の言葉を新たに選定、執筆していただいています。
世の中の激しい動きにともない、言葉の意味も変化していきます。新しく生じた意味は、その定着度を吟味しながら過不足なく加えました。また、言葉を発信する機会が増え、それぞれの言葉の意味を的確に把握し表現したいというニーズも増しています。動詞・形容詞を中心に類義語の意味の違いが分かる語釈を追求しました。
言葉の根本の意味をきちんととらえた上で、歴史的な意味変化に沿って語釈を与えるのが『広辞苑』の流儀。その基本に立ち返り、「万葉集」「源氏物語」など古典から引用した用例を総点検しました。その結果、基礎語の語釈を全面的に書き換えたり、見出しの形を改めたりした例も少なくありません。その他の古語項目もさらに充実させました。
第六版刊行後に収集した言葉に加えて、旧版までは採用しなかった言葉もあらためて検討し、日本語として定着した語、または定着すると考えられる言葉を厳選。新加項目は約一万に達しました。ネットで何でも検索できる時代だからこそ、言葉の使用場面を越えた中心的な意味を一読して把握できるように、余分な言葉をそぎ落とし洗練した語釈を付しました。
第七版の本冊は第六版よりも一四〇ページ増加、しかし厚さは変わりません。製本機械の限界である八㎝に収まるように、さらに薄い紙を開発した結果です。しかも、手に吸い付くような、めくりやすい「ぬめり感」は保持したまま。これを高度な印刷・製本技術で一冊にまとめています。大型の「机上版」は、多くの方からご好評をいただいている二分冊です。
21世紀の今を映す 新たに追加された項目
広く使われ日常語として定着した言葉。今という時代を読み解くために将来不可欠と考えられる言葉。社会の状況を顕著に映し出す事項や人々……。新しく加える項目は、慎重に検討を重ねて選りぬきました。
日本語の基礎的な言葉の意味を分析しなおし、類義語(似た意味の言葉)との意味もすっきり分かるようにしました。
昔からある言葉でも、時代とともに意味が広がることがあります。たとえばこんな言葉に新しい意味が加わりました。
第六版刊行からの10年間で世の中が大きく変わりました。それにともなって辞典の解説もアップデートしています。
写真以上に、その事物の特徴を抽象化して分かりやすく示すことができるのが線画です。ある図版は描き直し、ある図版は新たに追加しました。
こんなに変わった!? 語義の変遷
初版では、「おおかみ(狼)」は「おうかみ」という仮名見出しで掲載しています。「おおかみ」も「おうさま(王様)」も最初の「オー」の音は同じなので、同じように引けるようにとの考えによるものでした。今では学校で習う「現代仮名遣い」がすっかり定着したため、「おおかみ」が見出し表記となっています。
二版までは、動詞は文語形が主項目になっています。つまり「上げる」ではなく「上ぐ」、「満ちる」ではなく「満つ」に意味が書いてあり、「上げる」「満ちる」は参照用の見出しです。文語形を思いつかなければ、引く手間が二度になってしまいます。今はもちろん「上げる」「満ちる」に意味が記述されています。
「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」は現代の日本語では同じ発音です。三版までは、それらをすべて「じ」「ず」で引けるようにと考え、「鼻血」は「はなじ」、「三日月」は「みかずき」を見出しとし、そこを引くと「はなぢ」「みかづき」という仮名遣いが分かる仕組みになっていました。今は、現代仮名遣いの「はなぢ」「みかづき」が見出しになっています。
「明ける」「開ける」「空ける」など同訓の漢字の使い分けは迷うものです。四版までは語義番号の下に《 》で大まかな書き分けを示していましたが、五版からは項目末尾に「◇」でコラム的な解説を設けています。また、日常的に使われるアルファベット略語が急増しています。五版からは付録にその一覧を付け、現在は別冊化してさらに充実しています。
解説文を見ると「変る」「落す」などという送り仮名が目につきませんか。内閣告示「送り仮名の付け方」によれば、「変わる」「落とす」(本則)、「変る」「落す」(許容)のどちらも間違いではありませんが、学校で習うのは「変わる」「落とす」。「許容」の送り仮名に違和感を覚える方が増えたので、第六版からは「本則」に変更しました。
確認してみませんか? 本来の意味